朱乃紅スキゾ日記

管理人朱乃紅の統合失調症の闘病記、雑記

『薔薇の名前』と『白いリボン』

昨日と今日でジャン・ジャック・アノー監督の『薔薇の名前』とミヒャエル・ハネケ監督の『白いリボン』を見た。

この二作は、何年か前に見たことがあり二回目だが、どちらも忘れることの無い作品だったので、レンタルで借りた。

薔薇の名前』は、ウンベルト・エーコの原作小説を映画化したものだが、私は、この中世ヨーロッパの雰囲気が好きだ。殊に、教会や王城で起こる事件や怪奇なものに惹かれる。この作品もそういったミステリー映画で、漫画だと『ベルセルク』を彷彿させる。それから、私の好きなホラー映画の『デモンズ3』もゴシック建築の教会が舞台だから、やっぱり中世は暗黒の時代と言われているが、人間の興味を引く時代なのだろう。小説も分厚い上下巻があり持っているがまだ読んでいない。これを読む前に売却病が出てしまったからだ。今は避難させている。

ところで、この作品。セットやロケ地は魅力的なのはもちろんのこと、キャストもとても素晴らしい。それは、かの有名な亡ショーン・コネリーが主人公である。コネリーは、年季の入った修道士で、その弟子を務めるのが若き日のクリスチャン・スレーターだ。

コネリーは円熟期でとても渋くてかっこいい。そしてスレーターも若々しさとみずみずしさがある。二人の修道僧が古い修道院で起こる奇妙な連続殺人に立ち向かっていくヒーロー的な面白さもある。ジャン・ジャック・アノー監督の作品は、『スターリーングラード』を見たことがあったような気がするが覚えていない。今回この作品を見て、興味が出たので未見の『セブン・イヤーズ・イン・チベット』など見てみようかな。

映像特典で監督のオーディオコメンタリーが入っていたが、流石に2時間解説を聞くのはしんどいので、見なかった。

 

次に見たのは、先日も少し話したミヒャエル・ハネケ監督の『白いリボン』である。

前回見たときは、人間関係をきちんと整理しないで見たので、よくわからないところが多かったが、今回は、もう一度その部分を見直したのである程度はっきりしていた。

『隠された記憶』にしろ、『愛、アムール』にしろ、『セブンス・コンチネント』にしろハネケ監督は必ず社会情勢を織り交ぜて表現するので面白い。

この作品は、第一次世界大戦前のドイツの話だが、私はどうしても戦争というと第二次世界大戦を思い起こす。それは、もちろん日本人が直接的に体験した戦争が太平洋戦争だからということもあるし、歴史の勉強ではやはり第二次世界大戦がメインになるからだ。サラエボ事件というオーストリアの皇太子がセルビア人に暗殺された事件は、私の中では薄い。それでも、小説『虐殺器官』で起きた事件はサラエボだったのを思い出す。この作品のどこを楽しめばいいのだろうか。私は、やはり子供の怖さに注目した。

小さな村で次々と起こる奇妙な事件で鍵を握っているのは子どもたちだ。子供は、大人が思うよりずっと賢い。子供が見せる表面的な可愛さ無垢さとは別に狡猾さと残忍さも備えている。私が子供の頃体験したいじめや嫌がらせ、そういった子供の悪意は、いかなる純真な子供の心にもどこかしらあるに違いない。そういう観点でこの作品は、特に優れていると言えるだろう。ラストは、やはりハネケ監督らしい終わり方だった。

今まで見てきたハネケ作品ってみんな音楽が無かったけれど、ハネケ監督は音楽を使わないのだろうか。でもそれが更に作品の怖さと魅力を引き出しているところがあると思う。しばらくハネケ作品を借りてみようと思う。