朱乃紅スキゾ日記

管理人朱乃紅の統合失調症の闘病記、雑記

『コード・アンノウン』『71フラグメンツ』感想のような。

私のミヒャエル・ハネケ監督作品コンプリートも後三つとなりました。

今回とりあげるのは、『コード・アンノウン』と『71フラグメンツ』。

またしても(?)な感じでした。やっぱりハネケ監督には、いつも煙に巻かれます。

『コード・アンノウン』から感想を述べますと、こちらの作品は、かの美しい女優ジュリエット・ビノシュが主人公です。ほんとに綺麗だよね。それは、それとして、私は、この作品は、ジュリエット・ビノシュが出るので半分くらい安心していました。もう一つ彼女が出演した『隠された記憶』でも酷いことにはならなかったので、やはり、ハネケ監督といえどもジュリエット・ビノシュに汚れ役はさせられなかったのでしょうか。

スザンネ・ロータやイザベル・ユペールにはかなり激しい汚れ役をさせていたけれど。

この作品、群像劇になっています。ジュリエット・ビノシュ演じるアンヌが起点になっていますが、その他に何人かの俳優が入れ代わり立ち代わり役を演じます。それらが点と点になって繋がっていくのです。時代背景が影響しているのもこの作品ならではです。アンヌの夫は当時のコソボ紛争の戦場カメラマンです。悲惨な戦争の情景が時々映し出されます。ハネケ監督は、こういった時事問題をドラマにうまく絡ませることができる人です。超個人的な作品なのに社会に繋がっているのです。

舞台はパリ(?)ですが、そこで色々な人が描かれます。アフリカ系の移民やラテン系の移民が登場し、それがアンヌたち生粋のフランス人との軋轢を生む様をありありと描いています。アラブ系の移民も描かれていかにフランスが多民族国家であるということがわかります。しかし、やはりそこに差別や偏見が満ちているのです。自由の国フランスですが、この問題は今でも根深いと思います。アメリカの様にものすごいムーブメントにはなっていないようですが。ここでハネケ監督が描きたかったのは、人種の軋轢でしょうか。しかし、それを真っ向から描くのではなく、個人の問題として社会を描くのが彼のやり方です。

最終的には、またも観客に委ねられるというのがもう彼の決定事項です。

ですが、これだけの人種を一つの作品で描ききるという力技は凄いと思います。

話の内容を70%くらいしか理解できませんでしたが、それでも、興味が持てました。

次に見た作品は『71フラグメンツ』という作品で、こちらもテイストがかなりアンノウンに似ていました。独裁者のミロシェヴィッチ大統領時代の話で、こちらも、ユーゴスラビア紛争を描いているので、先程の『コード・アンノウン』と近い時代かもしれません。私、ミロシェヴィッチ大統領って死刑になったと思っていましたが、獄死だったのですね。私は誰と間違っているのだろう。ちょっと思いつかない。

ストーリーは、ウィーンで学生が銀行で銃を乱射させて3名を殺害、自身もすぐに自殺するという実話をそこに至るまでの事件に遭遇した人たちの群像劇を描くという内容。

(ウィキ参照)この事件は、ヘイトクライムなのか、どうか。ただ、フラストレーションを抱えた青年が銃を乱射して自殺というだけの話なのか。そこはわからないのだけれど、やっぱりそこに社会問題が投げかけられています。亡命してきた子がどんな人生を辿るのか、そして養子になった孤児は?最終的には、学生が死んで終わるのですが、

最後にマイケル・ジャクソンの当時の問題をニュース映像で流します。社会問題を出来得る限りリンクさせ描くそんな作品なのでしょう。

私は、この二作を見て、きっとハネケ監督は、今のコロナ問題を映画にしてくれるのではないかと期待します。社会の問題を超個人のところまで引き下げてあぶり出す。その手法がとても魅力的です。私は、『隠された記憶』から知ったのですが、監督の作品も後三つ『ベニーズ・ビデオ』と『タイム・オブ・ザ・ウルフ』そして『ファニーゲームU.S.A』他にもテレビ映画はたくさんあるようですが、日本で円盤化されているのはこれだけみたいです。

後三つだけど、結構きつそうなのが残ったな。特にファニーゲームは二度と見たくなかったので、U.S.Aだけど、気が重いな。

でも、今回『71フラグメンツ』に監督のインタビューがあったので、それが、とても興味深かったし、面白かったし、やっぱりハネケ監督は凄いオーラがあるというか、魅力的な人だと思いました。