朱乃紅スキゾ日記

管理人朱乃紅の統合失調症の闘病記、雑記

しばらく書かないと書けなくなる。(ミヒャエル・ハネケ監督作品とか)

ちょっとご無沙汰していました。何も無い日に何か書いても無意味に思えて止めていました。でも、書かないと、色々な理由をつけて書けなくなりそうな気がして、書くことにしました。きっかけは、昨日から見ていたミヒャエル・ハネケ監督作品についてです。私は、前に話したこともありましたが、ハネケ監督の作品が好きでした。と言っても、見ていたのは『隠された記憶』と『白いリボン』のことで、もちろん、『白いリボン』と同じくパルムドールを取った『愛、アムール』も好きでしたが、監督最初の作品の『セブンス・コンチネント』とかはそれほどといったところもありました。それでも、気になって、ハネケ作品をできれば全部見ようと思い、今回借りたのは、『ファニーゲーム』、『ピアニスト』、『カフカの「城」』だったのですが、昨日とりあえあず、『ファニーゲーム』からみてみることにしました。

見た後激しい後悔と苦痛、それからしばらくは放心状態でした。その全くの救いの無い物語、というか観客をこれほどまでに不快にさせる作品を私は見たことがありませんでした。これが、ハネケ監督なのか?私は、あの饒舌に自分の作品を語っていたあの優しい面立ちの監督に騙された気がしました。私は、ホラー療法と名付けて、色々なホラー映画を見たりしましたが、どんな気持ちの悪いスプラッター映画でも『ファニーゲーム』の不快さに敵うものは無いだろうと思います。いくつか批評をたどりましたが、ハネケ監督が社会、とりわけハリウッド映画の勧善懲悪に対してのアンチテーゼということがあるようでした。しかも、この作品は、アメリカでハネケ監督自身のセルフリメイクで『ファニーゲームUSA』として再度作られているのです。ですが、私は、視聴後しばらく何もできませんでした。はっきり言ってハネケ監督に失望したといっても過言ではありません。ですが、そこから数時間して私は、またハネケ監督を好きになったのです。それはどういう理由かはわかりません。あの全く救いのない、しかも、それ以上に観客を最強度に不快にさせる作品は、見てしまうとやはりそこに鬼才ハネケ監督としてのえぐるような魅力を感じてしまうのです。これは、まさに私が医師から禁忌とされている精神分析に近いようなものかもしれません。今まで見たハネケ作品は、大体社会情勢を反映したり加味しているような話でした。それだからこそ、面白かったし、引き込まれるところがありました。劇中に音楽を使わないところとかも好きでした。けれど、『ファニーゲーム』では、最初にクラシックがカーステレオで流れた後、ファンの方には大変申し訳ないのですが、聞くに耐えないデスメタルが流れたことでこれは、この映画は何かあるなと、感じました。進んでいくに従って苦しく辛い道程になりました。それでも、二度同じ作品を作ろうとしたということは、ハネケ監督にとってこの作品は、とても重要な作品なのだろうと思います。それは、映画界への反逆か、それとも社会への警鐘なのか、それともそれすらもハネケ監督の遊び、ゲームなのか。私はそうは思いませんが。性善説なのではなく、ハネケ監督の語り口にそれが余興とは思えないからです。さすがにもう一度見ろと言われても、見ることはできないと思いますが、USAの方は見るかもしれません。私は、ハネケ作品をできれば全部見たいと思っています。そんな『ファニーゲーム』から一夜明けて、私は借りたもう一つの作品『ピアニスト』を見ました。もしこの順番が逆になっていたら、私は、もうハネケ作品を見なかったかもしれません。『ファニーゲーム』の衝撃が大きすぎて、『ピアニスト』はまだ安心して見れました。それでも、まだ、というくらいです。この作品もまたインパクトがありました。カンヌでは、パルム・ドールに次ぐグランプリを受賞しているようです。ここまでハネケ作品を見てきて、監督の手法は少しづつ見えてきていますが、やっぱり最後には、度肝を抜かれてしまうのです。

大体の作品がはじめ普通の人のしかも中流階級の人の日常を描いています。そこで、少し退屈してしまうあなたは、まだハネケ監督の真骨頂を知らない人でしょう。『ピアニスト』にしても普通に描かれていた日常が突然反転するのです。それは、小さい小道具からかもしれない。そこから物語は急展開を見せるのです。ハネケ監督はそうします。

結局ラストは観客に委ねる。そのやり方はほとんどの作品で一貫しています。だからこそ次も見たくなる。またどんな考察が加えられるのかを知りたくなる。それがハネケ監督作品だと私は思います。私は、アニメ好きなので『シン・エヴァンゲリオン』は人生を動かされるほど感動しました。普遍的でそれでいて起伏が少ないシン・エヴァでしたが、私は五回見に行くほど好きになりました。それと、このハネケ監督の作品は、全くの対称的な作品です。でも、映画の可能性として私は、シン・エヴァもハネケ作品も共に好きなのです。もちろん、映画は、人生を豊かにして人に感動を与えるもの程素晴らしい作品と言えるかもしれませんが、ハネケ監督の作品もまた、シン・エヴァとは違った意味で人に何かを投げかけるものなのだと私は思っています。まだ、『カフカの城』の方が残っています。カフカ自体読んだことが無いので、どうなるのかまだわかりませんが、きっとまた期待を裏切られそして傷ついて、最後には愛おしくなるのかもしれません。