朱乃紅スキゾ日記

管理人朱乃紅の統合失調症の闘病記、雑記

平修さん『夜光の詩』を読んで

まず、この記事を書くにあたって、読後なるべく時間をかけないようにしようと思った。詩は生物で、読んだ直後の気持ちが一番新鮮だと思ったからだ。

そして、この詩集は、それを如実に表すくらいとても繊細でそして味わい深いものだった。

平くんは、我々のサークル代々木果実混合(よよぎフルーツミックス)の仲間で、それで書き手であり、また絵師でもある。これまで何作もの短編小説と表紙絵を上梓してくれたサークルには無くてはならない存在である。

その平くんが5月に行われる文学フリマ東京38に個人出店したいと言ったのは、前回の文学フリマで出店した時だったろうか。それまで書き溜めていた数々の詩を発表したいというのだ。私もそれは、応援せねばという気持ちで製本のやり方などを少しご教授して今回の出店に微力ながらお力添えすることになった。

そして、完成した詩集がこの『夜光の詩』だ。

前回のサークルの飲み会で初お披露目して、出店の手伝いをするということで私に無料で一冊手渡してくれた。その飲み会が終わって、私は不調が続いていたため、すぐに読むことができず、カバンに入れたままになっていたのだが、今日、勉強のあとカフェでコーヒーを飲んだ時、さて読んでみようと思い、本を開いたが、ページをめくる手が止まらなくなった。先程述べたように、詩の一つ一つが生き物のように脳内を駆け巡り、目を離させない、ある詩は、激しく叩きつけるかのようで、またある詩は、小春日和の様に暖かく切ない。一つとして同じ詩は無く、全てが生き生きと躍動していて脈打っている。全く飽きること無く私は、この作品を一気に読み終えた。

するとどういったことだろうか。解毒作用と言えばよいのか、私の心は、澄み切って、抱えていた悩みが洗い流される様な感覚を覚えた。

平くんは、この詩たちをブログに掲載しているので、よく目にしているのだが、こうして一冊の本として完成するとデジタルの文字では味わえないまさに手触りの感覚があり、生きた言葉として私に届いた。どの詩も素晴らしかったが、私が特に気に入った詩は、数あれど、『凍てつく雨の日』という詩は、この本の中でも異色の文体で綴られている。少し物語風というか、長めの詩になっているのだが、バスに乗車したときの風景から車内の雰囲気、そして降車して「傘もささず夜道を歩き帰路につく」から一日を思い返し、最後に「私は確かにここに居る」と結んでいる。日常とそれから心象風景を映し、寂しいながらもしっかりとした存在感を表している気がした。

リズム的に統一されている様な詩もあるが時折見せる違った文体が可愛らしい。『FAKE』とぃう詩もそういったストレンジな味わいがある。「優しい嘘をついて 完全に騙しきってね」などだ。出色の作品はやはり表題の『夜光の詩』かもしれないが、私は、最後の『閃光』が好きだ。「人はいつでも物語を創る 生の尊さという芸術が生まれる」それで結ばれている。

こういった詩をどこで学べば書けるのか私にはわからないが、彼の貪欲な学びの姿勢から生まれたものなのだろう。ジャンル的に言うと現代詩に入るのだろうが、それでも、語りかけるようなリズムが心地よい。それもこれもやはり紙という媒体で更に輝きをますものだと思った。

5月19日私も微力ながら参加するが、楽しみになってきた。