岸田秀先生の『ものぐさ精神分析』をようやく読み終えた。結構かかったな。多分二ヶ月以上はかかった。他の本も並行して読んでいたのもあるが、この本、分量が凄い。
ページ数は347ページで普通の長編小説と同じくらいになると思うけれど、1ページあたりの文字数がかなりやばい。びっしりと埋まっている。フロイトの『精神分析入門』ほどではないが、結構な分量だ。本当に面白かった。目からうろこが何度も落ちた。私は、この本と並行して認知行動療法の本を読んでいた。今では色々な学説や学問同士の連携があるからわからないけれど、かつては、精神分析は認知行動療法の人からは、時代錯誤の非科学的な治療法で敬遠されていたと思う。今では、大分そうではなくなって来ているようだが、この二つは、基本的なところでお互いを嫌っていた。
でも、私はこの二つをどうしても選べなくて、そして、両方を読むということを続けてきた。すると、やはりこの二つは切って選ぶものではなく、折衷して補い合うことが大事のだと分かった。私は認知行動療法に出会って、つまづいたが、そこで活路を見出してくれたのがずっと好きだった精神分析だ。やはり私には精神分析は必要なのだ。
そして、今この二つがとても安定している。同時に読み進めることがとても効果があると思っている。それで今回読了したのは、上記にあるように岸田秀先生の『ものぐさ精神分析』初版は1976年。私がブックオフで購入したものは、岸田秀コレクションで1992年第一版のものだ。
もう私が生まれた頃の本で、多少古臭いところはあるものの、全く現代にも通ずる、人間観や世界観である。全編シニカルな解釈が多いようにも思えるが岸田先生はそう思ってはおらず、あくまでも先生独自の唯幻論が展開されている。フロイトの精神分析の正統かどうかはさておき、それでも様々なものの真理を暴き出し、白日のもとにさらしている。本物とは何かを解き明かすようだ。でも、全ては幻想だと。
それと私は岸田先生が最後に明かす自身の病気についての告白がとても身にしみた。
岸田先生は、自分を強迫神経症だとおっしゃっていて、その症状などがとても他人事には思えないものがあった。でもそれを自分の学びの力で克服してここまでの人になったのだからすごい人だと思う。
いままで何冊か岸田先生の本を読んだがこれが一番面白かった。そして、まだいくつか読んでいない先生の本が何冊かあるので読もうと思うが、一旦はなれてフロイトに行こうかと思う。